株式会社伍魚福 代表取締役社長

読書メモ2020.05.06(Wed)「ペスト」カミュ著

新型コロナウイルス感染拡大と関連して、売れていると話題のカミュの「ペスト」を読みました。
STAY HOMEの一環でもあります。

194ⅹ年、アルジェリアのオランという人口20万人の町でペストが蔓延し、収束するまでをドキュメンタリー的に描いた作品です。
70年以上前に書かれたと思えません。さらにはこの作品がフィクションであることにも驚かされます。

第二次世界大戦、ナチスとの戦いを終えた時期、キリスト教の考え方などを背景として「不条理」をテーマにした作品ですが、正直ちょっと読みにくく、購入後読了まで10日以上かかってしまいました。

新型コロナウイルス感染症という、未知の感染症に接する我々と共通する人間模様が淡々と描かれていて、時代や国を超えて人間の考え方、そして強さ、弱さは全く変わらないことに衝撃を受けました。

カミュはこの作品を書くのに6年近くもの歳月をかけたそうです。
「異邦人」に次ぐ第2作として1947年6月に発表され、瞬く間に各国語に翻訳され、世界中でベストセラーになったそうです。
1957年には、44歳という異例の若さでノーベル文学賞を受賞しています。

最後の一段落が、今の我々に対する警句となっています。

「事実、市中から立ち上る喜悦の叫びに耳を傾けながら、リウーはこの喜悦が常に脅かされていることを思い出していた。なぜなら、彼はこの歓喜する群衆の知らないでいることを知っており、そして書物のなかに読まれうることを知っていたからである――ペスト菌は決して死ぬことも消滅することもないものであり、数十年の間、家具や下着類のなかに眠りつつ生存することができ、部屋や穴倉やトランクやハンカチや反古のなかに、しんぼう強くまちづづけていて、そしておそらくはいつか、人間に不幸と教訓をもたらすために、ペストが再びその鼠どもを呼びさまし、どこかの幸福な都市に彼らを死なせに差し向ける日が来るであろうということを。」

我々が今対面しているのは、まさしくそういうこと、のように思えます。
STAY HOME「家にいよう」。
それを守れるのか、我々の民度が試されています。